お家で猫を飼っている方、飼っていなくても猫好きで野良猫などをみかけるとついつい触りたくなってしまう方、猫って大変カワイイですよね。
私も猫好きで、自宅でも飼っていますし、外でみかければ触りたくなってしまいます。
しかし、猫がかかってしまう感染症の中には私たち人間にうつってしまう病気もあるんです!
猫に限らず、動物から人へ感染する病気のことを
「人獣共通感染症」
または
「Zoonosis(ズーノーシス)」
と呼ばれていますが、感染症法に定められた病気ではないので十分な対策も取られていません。
しかし、中には人獣共通感染症にかかり命を落としてしまった例もある、とても危険な感染症です。
今回は、その人獣共通感染症の中でもかかりやすいものや代表的なものを感染源ごとにいくつか紹介していきたいと思います。
猫から人にうつる病気は?
猫から人にうつる病気にはさまざまなものがありますが、
その主な感染源は
- 細菌
- 真菌(いわゆるカビ)
- 原虫(単細胞の微生物)
- 寄生虫
といったものがあります。
それでは、感染源ごとに紹介、解説していきますね。
細菌が感染源の病気
まずは、細菌が原因の病気です。
猫ひっかき病
猫を飼っている人なら一度は聞いたことがある病気ではないでしょうか。
この病気は「バルトネラ菌」という細菌をノミが媒介となって猫に感染します。
猫が感染しても何も症状が出ないので、普段の生活から感染しているかどうかを見抜くのはできません。
原因
その名の通り、猫にひっかかれることが主な原因ですが、他にもかまれたり、猫についていたノミに刺されることによっても感染することがあるようです。
症状
- 傷口が腫れる
- リンパ節が腫れたり、痛みが出る
- 発熱
といった症状が出ます。
猫にひっかかれたり、かまれたりした後、3日~10日程度の潜伏期間を経て症状が現れます。
ほとんどの場合は自然に治っていきますが、まれに重症化してしまうこともあります。
猫にひっかかれたり、かまれたりしたときは軽く見ずにしっかり傷口の消毒をするようにしましょう。
また、普段から猫のノミ駆除を徹底してするようにしましょう。
パスツレラ症
「パスツレラ菌」という細菌が原因となる病気です。
猫の口の中や爪にいる細菌ですが、ほとんどの猫が持っているといわれています。
この細菌に猫が感染しても何も症状が出ませんが人が感染すると重症化することがあります。
原因
猫ひっかき病とは逆で、こちらは主にかまれることで感染することが多いです。
他には、ひっかかれたり、まれに気道感染をすることもあります。
症状
- 傷口の痛み
- 傷口の腫れ
- 気管支炎や肺炎(気道感染した場合)
といった症状が出ます。
40歳以上の方に発生することが多く、かまれてから数時間後に傷口の痛みと腫れが出てきます。
ひどくなると、「骨膜」と呼ばれる骨を覆っている膜が壊死を起こしてしまうこともあります。
かまれたり、ひっかかれたりしたらすぐ消毒をするようにしましょう。
また、傷口がズキズキとひどく痛んだり、腫れるようなら早めに病院へ行きましょう。
サルモネラ症
「サルモネラ菌」が原因で起こる病気です。
主に、豚や鶏、牛などの腸内や、汚染された土壌、水、食物などに生息し、特にミドリガメなどの爬虫類は持っている確率が高い細菌ですが、猫も持っていることがあります。
大人の猫が感染した場合は症状が出ないことが多いですが、子猫が感染すると、下痢などの症状が出ることがあります。
原因
菌を持っている猫、またはそのウンチに触れた後に、何かの原因で口の中に菌が入ると感染してしまうことがあります。
症状
- 下痢
- 嘔吐
- 急性胃腸炎
といった症状が出ます。
感染した場合、8時間~48時間の間に発病することが多いです。
子供が感染してしまった場合、意識障害や痙攣など重症化しやすいので気をつけましょう。
猫のウンチを始末した後などにはしっかりと手洗いをするように心がけましょう。
カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症
「カプノサイトファーガ・カニモルサス」という細菌が原因の病気です。
この菌は、猫の口の中の常在菌で国内の猫もほとんどの猫が持っている細菌ですが、猫には何の症状も出ません。
病気を発症することはほとんどないのですが、発症してしまった場合、致死率が高く危険な病気です。
原因
菌を持っている猫にかまれたり、ひっかかれたりした場合。または目、口といった粘膜部分や傷口をなめられた場合も感染してしまうことがあります。
症状
- 発熱
- 腹痛、頭痛
- 倦怠感や吐き気
といった症状が出ます。
重症化してしまった場合、「敗血症」、「骨髄炎」、「多臓器不全」になってしまい命を落としてしまうこともありますので、抵抗力が弱っているときや高齢者などは注意するようにしましょう。
かまれたり、ひっかかれたりした場合は消毒するようにしましょう。
また、カワイイからと安易に顔周りなどをなめさせないようにしましょう。
真菌(カビ)が感染源の病気
続いて、真菌(カビ)が感染源の病気を解説します。
皮膚糸状菌床(ひふしじょうきんしょう)
「皮膚糸状菌」が原因で起こる皮膚の病気で「猫カビ」とも呼ばれることがあります。
免疫力の低い子猫やシニア猫、またはペルシャ猫のような毛の長い猫に起こりやすい疾患で、顔や足などの感染したところに円形の脱毛と痒みが起こり、周囲にフケが出るようになります。
原因
皮膚糸状菌に感染した猫を触ることで感染してしまう可能性があります。
また、直接猫に触らなくても、ブラッシングに使った猫用ブラシなどから感染してしまうこともあります。
症状
- 痒み
- フケ
- リング状に炎症が起こる
といった症状が起こります。
多くの人は感染しても症状が出ないのですが、子供や免疫力の低くなっている人、または皮膚の弱い人などは症状が出てしまうことがあります。
感染した場合、人から人、人から物へと感染していきますので、症状が見られたら早めに病院へ行くようにしましょう。
原虫が感染源の病気
次は原虫が感染源となる病気を紹介します。
原虫とは単細胞の微生物のことで、一般的によく聞く「ゾウリムシ」や「アメーバ」の仲間です。
ある種の原虫は人や動物に寄生して重い病気を引き起こしたりします。
トキソプラズマ症
「トキソプラズマ・ゴンディ」という原虫が原因で、猫に関わりが深い病気です。
というのも、この原虫は他の動物にも感染しますが、猫の体内に入ったときだけ増殖していきます。
他の動物の体内に入っても増殖せず、じっとしているだけなのです。
こういう寄生虫にとって居心地がよく増殖できる動物を「終宿主」と言い、トキソプラズマの終宿主は猫だということです。
原因
猫のウンチと一緒に出てきたトキソプラズマが何かの原因で口に入ったりすることで感染します。
例えば、公園の砂場などで猫がウンチをした後で子供が遊び、手などにトキソプラズマがつき、その手で顔を触ったりして感染してしまうといった感じです。
症状
多くの場合、何も症状は出ないのですが
- 発熱
- リンパ節の腫れ
- 視力障害、眼の痛み(目に発症した場合)
といった症状が出ることがあります。
抗体を持ってない妊婦さんが感染すると、流産や死産、または生まれた子供に何か先天的な障害が出る可能性もありますので注意しましょう。
クリプトスポリジウム症
「クリプトスポリジウム・パルバム」という原虫が原因の病気です。
猫以外にも多くの動物の消化管に寄生しています。
クリプトスポリジウムは塩素に抵抗力があるため、水道水から集団感染が起きたこともあるようです。
原因
感染した猫のウンチに含まれた原虫が、何かの原因で口に入ることで感染してしまう可能性があります。
症状
- 腹痛を伴う激しい水のような下痢
- 発熱
- 嘔吐
といった症状が出ます。
猫が感染しても症状は出ません。
寄生虫が感染源の病気
寄生虫が感染源の病気もさまざまなものがありますが、大きく分けて
の2種類に分けられます。
それでは、種類別に紹介していきます。
外部寄生虫が感染源の病気
ノミ刺咬症
猫についたノミなどは人にもうつります。
普段から猫の外への出入りを自由にしているなら、ノミやダニの駆除は徹底しましょう。
原因
猫についたノミが人にうつって刺されることで発症します。
症状
- 痒み
- 刺された部分の腫れ
といった症状が出ます。
ライム病
マダニによって媒介される「ボレリア菌」という細菌が引き起こす感染症です。
原因
猫についたマダニが人をかむことによって感染してしまいます。
症状
- 筋肉痛や関節炎
- 発熱
- 悪寒
といったインフルエンザに似た症状が出ます。
その後、ひどくなると「皮膚炎」や「心疾患」など起こすこともあります。
疥癬(かいせん)
「猫ショウセンコウヒゼンダニ」というダニによって引き起こされる皮膚の感染症です。
原因
猫ショウセンコウヒゼンダニに寄生されている猫に触れることによって感染することがあります。
症状
- 激しい痒み
- 水疱
- じんましんのような腫れ
といった症状が出ます。
しかし、ほとんど重症化することなく自然治癒するということです。
ツメダニ症
猫に寄生した「ネコツメダニ」という白くて小さいダニが引き起こす皮膚疾患です。
原因
ネコツメダニに寄生された猫を抱きかかえるなどして触れることによって感染する可能性があります。
症状
- 強い痒みや痛み
- 発疹
- 皮膚炎
といった症状が出ます。
猫は治療が必要ですが、人の場合は自然に治ることが多いということです。
内部寄生虫が感染源の病気
猫回虫症
「回虫」というおなかの中の虫によって引き起こされる感染症です。
人の体内に侵入した場合、成虫になることはできず、幼虫のまま体内を移動して内蔵や目などにさまざまな障害を起こします。
これを「幼虫移行症(トキソカラ症)」と言います。
原因
感染した猫のウンチと一緒に出された回虫の卵が何らかの原因で口の中に入った場合に感染する可能性があります。
症状
症状は内蔵に移行する「内臓移行型」と目に移行する「眼移行型」に分かれます。
内蔵移行型
- 発熱
- 筋肉痛や関節痛
- 肝障害
眼移行型
- 視力低下
- 失明
といった症状が出ます。
また、脳に移行してしまった場合はけいれんなどのてんかん発作を起こすこともあります。
猫では症状が出ないことがほとんどですが、子猫だと下痢などの消化器官の症状が出ることもあります。
瓜実条虫症(うりざねじょうちゅうしょう)
瓜実条虫(サナダムシ)という虫によって引き起こされる病気です。
人に感染することは非常にまれだといわれていますが、子供などは気をつけるようにしましょう。
原因
瓜実条虫の幼虫が潜んだノミを飲んでしまう、またはそのノミを潰したりした際に、手についた幼虫が口に入ってしまうことなどで感染します。
症状
ほとんどが何も症状がないですが、子供では
- 腹痛
- 下痢
といった症状が出ることがあります。
感染を予防するには?
猫から人へ感染する病気があるとはいえ、普段の生活からきちんと予防しておけばそれほど感染を気にすることもありません。
ということで、猫と生活していくうえで気をつけておくことを解説していきます。
ノミやダニの駆除はきちんとしよう
完全室内飼いの猫でも人にくっついたりして入ってきて猫に寄生したりすることもあるので油断せず、定期的にノミやダニの駆除を行うようにしましょう。
猫にかまれたり、ひっかかれたりしたらすぐに処置をしよう
猫にかまれたり、ひっかかれたりした場合は、軽く考えずにすぐ傷口の消毒などをして処置するようにしましょう。
特に小さいお子さんなどは抵抗力が弱いので、腫れなどが見られたときは病院に行くようにしましょう。
猫の世話をした後は手を洗うようにしよう
細菌などの病原体は、手についたものがそのまま顔周りを触ることによって口や目から体内に入ってしまうことが多いです。
なので、猫のトイレを掃除したりした後は必ず石鹸などを使い手を洗うようにしましょう。
猫と一緒に過ごす環境はキレイにしよう
猫と一緒に過ごすところはこまめに掃除をするなどして常に清潔にしておくようにしましょう。
汚れた環境では、人だけではなく猫にもストレスが溜まってしまい病気を発症する要因にもなりかねません。
最後に
いかがだったでしょうか。
猫から人へ感染する病気も結構あるものですね。
猫はカワイイですし、ついつい触りたくなる気持ちはわかりますが、触った後やひっかかれてしまった後(特に野良猫)はきちんとした処置をすることが重要ですね。
猫から病気が感染したとなったら、「猫が悪者」となってしまいがちですが、猫自体は感染を防げませんし、感染を予防する環境づくりもできません。
飼い主であるアナタご自身が、普段から気をつけて人のみならず猫の健康も守るように心がけていきましょう。
それでは、少しでもこの記事が参考になったなら幸いです。